「派遣社員への差別って当たり前のことなの?」
「正社員が派遣社員をカス扱いするってマジ…?」
などなど、派遣社員への差別について気になる方もいますよね。
正社員と派遣社員だと雇用形態が違い、そこから差別や格差などが生じるのでは、と気になることでしょう。
ですが実際のところ、派遣社員への差別行為は往々にして起きているのが実情です。
そこで今回は派遣社員626人を対象にしたアンケート調査をもとに、派遣社員への差別実態について徹底解剖。
働き方が見直される2022年の今、どんな差別がはびこっているのかを具体的に掘り下げていきましょう。
■アンケートの調査概要
- 調査方法:インターネット調査
- 調査対象:20代~50代の派遣経験者 男女626名
- 調査時期:2022年5月9日~2022年5月13日
派遣社員への差別的待遇は往々にして起きている
「『派遣社員だから』と、雇用形態の違いから差別的な経験を受けたことがありますか?」という質問に対し、「ある」と回答したのは42.2%、「ない」と回答した人は57.8%という結果となりました。
派遣社員のうちおよそ2人に1人は、職場で雇用形態の違いから差別を受けているのが現状です。
なお男女別だと女性のほうが、差別的経験を受けた人が多かったです。
性別 | 差別的経験を受けたことが 「ある」 | 差別的経験を受けたことが 「ない」 |
---|---|---|
男性 | 116人 | 123人 |
女性 | 148人 | 239人 |
では具体的な差別としてどんな事例が挙がるのか。詳しく掘り下げていきましょう。
派遣社員へのよくある差別的待遇の主な4パターン
先ほどの質問に続き「具体的にどんな差別的待遇を受けたことがありますか?」との質問に対し、以下の回答が得られました。
- 「支給備品について正社員との差があった」:32%
- 「全社員共有の施設・設備について派遣社員だけ使わせてくれなかった」:24%
- 「名前ではなく『派遣さん』みたく呼ばれた」:23%
- 「派遣社員だけ社内イベントに参加させてくれなかった」:16%
- 「その他」:5%
上記の通り、「支給備品について正社員との差があった」の回答が約3割を占めており、多くの派遣社員が感じている差別的待遇となっています。
こちらも男女別で分けると以下の通りです。
差別的待遇 | 男性 | 女性 |
---|---|---|
支給備品について正社員との差があった | 67人 | 69人 |
全社員共有の施設・設備について派遣社員だけ使わせてくれない | 52人 | 53人 |
名前ではなく「派遣さん」みたく呼ばれた | 37人 | 63人 |
派遣社員だけ社内イベントに参加させてくれなかった | 23人 | 47人 |
その他 | 10人 | 11人 |
基本的に回答への男女差がないですが、「名前ではなく『派遣さん』みたく呼ばれた」「派遣社員だけ社内イベントに参加させてくれなかった」については、女性票が圧倒的に多かったのが特徴的といえます。
では上記の差別的待遇について、詳しく掘り下げてみましょう。
差別①支給備品について正社員との差があった
正社員と派遣社員との間で、支給備品に違い・差のあるケースです。アンケートのなかでは最多回答となりました。
差があることで正社員より不便な思いをしますし、適切な労働環境が整備されていないといえます。
たとえば以下の支給品だと、正社員には支給されて派遣社員には支給されないケースが散見されます。
■支給備品について正社員との差がある例
- 身分証明書にICチップが内蔵されていない
→ドアロックを解除できない - デスク
- 筆記用具
- 制服
- 電卓 など
なお制服に関しては「マタニティ用の制服が貸与されなかった(30代前半女性)」なんて声もありました。
「入社したら個人で用意してください」と言われるケースもありますね…。
差別②全社員共有の施設・設備について派遣社員だけ使わせてくれない
派遣社員には支給備品だけでなく、派遣先で用意されている施設・設備を使わせてくれないケースもあります。
たとえば以下の施設・設備を使わせてもらえない事例があります。
■派遣社員に使わせてくれない施設・設備の例
- 社員食堂
- エレベーター
- ウォーターサーバー など
なお社員食堂については、正社員だと300円なのに派遣社員だと400円になるケースなどもあります。
差別③名前ではなく「派遣さん」みたく呼ばれた
正社員から派遣社員に対して「派遣さん」「◯◯担当の派遣さん」と呼ばれることで、一種の差別用語として感じられるケースもあります。
またひどいケースだと「マネキンさん」なんて呼称もあります。
自尊心を傷つけられると同時に、人格を否定された気分になることでしょう。
「あとの作業は派遣さんに任しておけ」「あいつは派遣のくせに」みたく遣われることが多いですね…。
差別④派遣社員だけ社内イベントに参加させてくれなかった
派遣先で実施されるイベントに、正社員は参加できても派遣社員は参加できないケースもあります。
たとえば忘年会、新年会、花見、その他季節もののイベントなどで、参加できないのもよくある話です。
またイベントに誘われてもビンゴ大会があった場合、派遣社員に目玉商品が当たって微妙な雰囲気になる事例もあります。
派遣社員への差別に関するその他の例
ここまでは派遣社員への差別についてよくある事例を紹介しましたが、アンケートのなかにはこんな差別事例もありました。
正社員よりスムーズに仕事してしまい下に見られ罵倒された(50代前半・男性)
正社員のなかには派遣社員を下に見ていて、劣った存在と見なす人もいます。
ですが優秀な派遣社員の存在により立場を脅かされることで、職場での優位性を利用して精神的ダメージを与えてしまうわけです。
見下したり罵倒したりするのはハラスメントと同じよね…。
コロナ禍の在宅勤務が認められなかった(30代前半・女性)
新型コロナウイルスの影響により在宅勤務・テレワークの普及が進んでいる今、「派遣社員だから」という理由でテレワークをさせてもらえない事例もあります。
しかもテレワークができないうえに無給になり、さらに時短勤務もできないことがあります。
とはいえテレワークになると社内PCの持ち出しによるセキュリティ面への懸念、コスト、勤務管理などの側面から実現しにくいのが現状なのです…。
厚労省も雇用形態でテレワーク・在宅勤務の対象者を分けないよう喚起していますが、まだまだ浸透していないんですよね…。
「君の代わりはいくらでもいる」と言われた(40代前半・女性)
派遣社員と正社員の立場を利用し、このように人格否定をしてくる人もいます。
分かりやすいくらい、相手を下に見ていることがわかりますね…。
たとえ指導を意図していた発言だとしても、「不快」に受け取られたならば話は別です。
休憩時間に自分のカバンを外に出されて締め出された(40代前半・女性)
まるでやることが子ども。
何かコメントするのが恥ずかしくなるレベルです。
態度の差(30代前半・女性)
上司にはペコペコし、派遣社員に対しては小バカにした態度。
立場を利用して人を区別し見下すのは、グズ中のグズです。
業務内容の違い(20代前半・男性)
業務内容の違いも、差別的だと感じやすい部分の一つ。
たとえば工場でのライン作業をはじめとした単純作業を押し付けられれば、「何でこんな仕事してるんだ…」と感じるのはよくある話。
とはいえ正社員にはより高度な仕事を任せたく、スキルアップしてもらいたいと考えるのが企業側の実情です…。
そもそも派遣社員への差別が起こるのはなぜ?
今回紹介してきたような差別行為が生じてしまうのはなぜなのか。具体的に考えられる理由・背景は以下の通りです。
■派遣社員への差別が起こる理由・背景
- ムラ社会の思考
- 派遣社員に対する勘違い
- 優越感に浸る
理由①ムラ社会の思考
日本の場合は古くからムラ社会の思考があり、少数派や多様性を認めない特徴をもっています。
また排他主義により仲間意識が強く、理解しがたいよそ者を排除する考えも根付いています。
以上の点が現代の会社組織(派遣先)でも起こり、外部から派遣される派遣社員に対しては排他的な対応をとることで、差別につながると考えられます。
理由②派遣社員に対する勘違い
派遣社員の場合は契約内容で決められた仕事はでき、契約外の仕事はできません。契約外の仕事を振っては契約違反になってしまいます。
ですが正社員がこの派遣社員の契約内容をよく把握していなく、違反しているのに契約外の仕事を振ってしまうケースが多いんです。
ここで、正社員側は「なんでコイツはこんなことができないんだ」「能力なさすぎ」なんてイメージを抱き、差別に及んでしまいます。
こうした勘違いの解消も難しい話です…。
理由③優越感に浸る
仕事をしていれば、どうしてもストレスがたまって発散したくなるもの。
ここで派遣社員を利用することで、優越感に浸って発散したがる人もいるわけです。
たとえば派遣社員に莫大な量の仕事を押し付けて、慌てふためく姿を見ることで「自分がコイツより優秀である」と考えたりします。
こんな上司、ただの迷惑です。
差別されていると感じたら「派遣会社」に相談
少しでも「差別されている…」と感じたときは、まず登録した派遣会社に相談しましょう。
派遣会社の担当者に相談に乗ってもらい、待遇を改善してもらうよう話してもらうのが賢明です。
場合によっては辞めるのもアリ
有期雇用契約の派遣社員の場合は、派遣先との契約期間が定められていて途中で契約更新を断れます。
差別を受けながら働いてもストレスが溜まる一方ですし、更新を断って会社を辞めやすいのは派遣社員の特権でもあるわけです。
契約期間を満了して働くのが理想ではありますが、無理をしては心も体も崩してしまいかねません。
次に紹介される求人は派遣社員に対して差別意識をもたない、健全な会社の可能性だってあります。
状況に応じて派遣会社の担当者との相談のうえで、契約更新について相談してみてくださいね。
まとめ~派遣社員への差別については適切な対処を~
今回はアンケート結果をもとに、派遣社員への差別・格差について解説してきました。
結果を見ると備品や施設利用、呼び名、などで差別的待遇の蔓延が起きているのが現状。
こうした差別は慢性的に続くもので、なかなかすぐの改善にはつながりにくいものです。
とはいえ自身から動かなければ、問題解決に繋がりにくいのも現状です。
少しでも差別や格差についてストレスに感じたときは、まず派遣会社の担当者に相談してみてくださいね。