派遣社員って、やっぱり年金を払わなければいけないの?
もちろんです!
派遣社員も一般労働者と同様に加入の必要があります。
会社員なら厚生年金、自営業なら国民年金に加入しますが、派遣社員の場合はどうなるのか意外とわからないですよね。
今回は派遣社員の年金事情にフォーカスしましたので、ぜひ最後までお読みください。
派遣社員にも年金加入の義務がある
派遣社員にも年金加入の義務はあります。
一般的にこの年金は「公的年金」と呼ばれ、大きく分けて以下の通りです。
厚生年金→会社員や公務員が対象
派遣社員の国民年金
国民年金は10年以上保険料を払った人が65歳以上になって受給できる年金です。基礎年金とも呼びます。
20歳以上60歳未満の人で派遣契約が終了して厚生年金をやめたときは、国民年金への変更の手続きが必要です。
この変更手続きは自分でする必要があります。
手続きには、例えば以下のような本人確認や厚生年金をやめたことがわかる書類などが必要です。
- 本人確認できるもの(マイナンバーカード、運転免許証など)
- 個人番号のわかるもの(マイナンバーカード、通知カード)
- 年金手帳
- 離職票・退職証明など退職年月日がわかるもの
必要書類については、市区役所または町村役場へ事前に確認してから手続きを行いましょう。
以上の書類を住所地の市区役所または町村役場の窓口に持参して手続きをしてください。
日本に住んでいる以上、20歳以上60歳未満のすべての人は国民年金への加入義務があります。
老後働けなくなったときにお金をもらえる制度で、いくら支払ったかに応じて老後にもらえる金額が変わります。
低所得の場合は国民年金が免除される?
国民年金は対象者の所得が少ない、あるいは退職・失業時にも免除される可能性があります。
派遣契約期間を終えて保険料の支払いが厳しくなったら「国民年金保険料免除・納付猶予申請書」の提出をおすすめします。
この申請書が認められると、免除の程度に応じて減額された年金が支給されます。
派遣社員の厚生年金
厚生年金は、会社などで働いている70歳未満の人が加入する制度です。毎月の保険料は標準報酬月額の18.3%で会社と社員がそれぞれ折半して負担します。
標準報酬月額
基本給に残業手当、通勤手当などの各種手当を含めた税引き前の給与を、一定の幅で区分したものを標準報酬月額といい、保険料や年金額の計算に使います。
標準報酬月額は、残業手当や通勤手当のほか、社宅費や食事代などの現物給与の額も含めて決定されます。
派遣社員は会社に勤めて働くので、原則、厚生年金に加入します。
国民年金の追加として受給できるため、単純にもらえる年金の額が上がります。
厚生年金の保険料には国民年金の保険料も含まれており、また、保険料の支払いも半分で済ませられるため、保険料がかなりおトクになります。
厚生年金に加入すると、手取り額が減りますが、メリットもあります。年金は老後の年金だけではなく、障害になった場合も支給されます。近年心の病に罹患する人も多く、障害年金の重要性が見直されています。国民年金よりも有利な厚生年金加入のメリットは少なくないのです。
派遣社員が厚生年金に加入する条件は?
派遣社員が厚生年金に加入するためには、以下の条件があります。
派遣社員が厚生年金に加入する条件
雇用期間が2か月以上あり、勤務時間と勤務日数が派遣元企業の正社員の3/4以上の場合、”派遣会社の”厚生年金に加入できます。
この条件を満たす場合、派遣社員でも厚生年金への加入義務が発生します。
派遣の初回契約の時にこの条件をクリアしていなくても、契約更新の時点でクリアしていると加入義務が発生します。
“勤務時間と勤務日数が派遣先企業の正社員の3/4以上”という条件を満たしていなくても、以下の5つの条件満たすときも、厚生年金への加入義務が発生します。
- 厚生年金加入者が500人を超える企業で働いている(令和4年10月1日からは100人)
- 1週間の労働時間が20時間以上である
- 雇用期間が1年以上予定されている
- 給与が月8.8万円以上
- 学生でない
派遣社員が厚生年金に加入する場合、派遣会社が手続きをしてくれます。自分でやる必要がないので、安心して任せられます。
なお、派遣契約を終えると、厚生年金から脱退し国民年金に加入するのが一般的です。
ただし、1か月以内に次の仕事の契約があって、同じ派遣会社から派遣されて1か月以上の勤務が確定している場合は、そのまま厚生年金に継続加入できます。
派遣社員が年金加入できないケースもあるので注意
派遣社員が厚生年金に加入できる前提で話してきましたが、加入できないケースもあるので気を付けましょう!
派遣社員が厚生年金に加入できない条件は4つあります。
- 2か月以内の短期雇用の場合
- 日雇い派遣の場合
- 4か月以内の季節的事業、6か月以内の臨時事業所で働く場合
- 所在地が一定でない事業所で働く場合
厚生年金の保険料の計算方法
派遣社員はいくら厚生年金の保険料を納めなければならないのか、実際に見ていきましょう。
今回は時給1,200円の派遣社員Aさんが1週間で5日勤務(実働10:00~19:00、休憩1時間で実働8時間、1か月で20日の勤務)で他に手当の支払いが無い場合で見ていきます。
この場合、1か月の収入は192,000円となります(1,200円×20日×8時間)
以下の厚生年金保険料額表で標準報酬の欄の自身の等級を確認し、記載された保険料を納付します。
参照元ページ:日本年金機構
Aさんの月額収入は192,000円ですので、等級は13に該当します。
上述の通り保険料率18.3%のうち半分(9.15%)は企業が負担しますので、Aさんは折半額の17,385円を支払うことになります。
派遣社員の扶養内外の事情
年金・税金関連で「扶養内外のどちらで働くか」で悩む派遣社員も多いです。
扶養内外の勤務は厚生年金への加入にもかなり影響がありますので、必ず押さえたいところです。
扶養内で働くということは「社会保険における扶養」「税制における扶養」の2つのことを示します。今回は「社会保険における扶養」を見ていきます。
仕事によって年収が130万円を超えると、社会保険において扶養外の扱いとなります。
この金額は月収に換算すると10万8,333円になります。この額を超過すると社会保険の扶養を外れ、厚生年金の加入が必要です。
年収130万を超過していなくても、派遣会社の従業員数や勤務条件によっては、就業と同じタイミングで派遣会社の厚生年金に加入します。
派遣会社を比較して探す際は、これらの条件を意識するのも良いですね。
年金加入の事情はしっかり押さえよう
年金を納めるのは国民の義務であり、現在の高齢者だけでなく、将来的な自身の支えにもなります。派遣社員も同様です。
義務ですので「知りませんでした」では済まされません。
また、派遣社員の場合はシフトの組み方の自由度が高くて、勤務期間や時間で左右されます。
そのため、派遣社員としての生活がどうなるかを把握したうえで、厚生年金の支払い対象かどうかを、必ず確認しましょう。
厚生年金に加入すると、年金が2階建てになります。
厚生年金と同時に加入する健康保険のメリットも考えましょう。健康保険には、病気で働けなくなったような場合に備える「傷病手当金」の仕組みがあります。1年6か月、給与の約3分の2が支給されるこの手当金は魅力です。
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本記事監修者の北村 庄吾氏は、Youtube「週刊人事労務チャンネル」で人事労務関連の動画を提供しています。
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