皆さんは、仕事を発注する際に生じる契約形態にも種類があることをご存知ですか?
契約形態には大きく分けて「派遣契約」と「業務委託契約」があります。
更に業務委託契約の中に「請負契約」と「委任契約・準委任契約」にわかれています。
普段何となく契約をしているかもしれませんが、法律とも大きく関わりますので知らないとペナルティを受けてしまうことも…。
それぞれ義務や管理内容が異なりますので、特徴を理解しておきましょう。
3つの契約の特徴
契約の名前だけ聞いてもどんな契約なのかわかりませんよね。
3つの契約は似ている部分もあり間違えやすいので、それぞれの特徴をしっかり理解しておきましょう。
請負契約の場合
請負契約の目的は仕事を完成させることです。
3つの契約の中で、唯一仕事を依頼される労働者側が完成責任を負います。
仕事を完成させるまでのプロセスは労働者側が自由にコントロールすることができますので、期日までに完成させることができればプロセスは何でも良いです。
一方で依頼者側は労働者に対してプロセスを指示することはできません。
依頼をしたら、契約した期日までに何もしなくても労働者が完成物を提出してくれます。
完成責任は労働者にありますので、完成できなかった場合でも依頼者側の責任にはなりません。
委任契約・準委任契約の場合
委任契約・準委任契約とは、ある一定の期間で決められた業務の処理を行うことです。
委任契約と準委任契約で分かれているのは、法律を扱っているか、扱っていないかの違いがあります。
法律行為を行う業務を弁護士や税理士などに委託する場合は、「委任契約」、法律以外の業務を委託する場合が「準委任契約」です。
請負契約と違って、労働者は仕事の完成責任を負いません。
依頼者側が仕事の遂行に対して管理と注意を行いますので、仕事のプロセスに依頼者が介入してきます。
完成責任は依頼者側にあるので、完成までのプロセスを依頼者側の考えるスケジュールで進めることができます。
派遣契約の場合
派遣契約は、3つの中で一番聞きなじみがある言葉ではないでしょうか。
仕事を依頼する依頼者側のために、労働を派遣して働いてもらうことが目的です。
請負契約と委任契約との大きな違いは、仕事の指示は派遣会社ではなく派遣先が行うところにあります。
労働者が契約をしている派遣会社では管理のみを行い、実際に指示を受けるのは労働をしている派遣先です。
3つの契約の違いまとめ
3つの契約において一番の違いは完成責任です。
その他にも、指示を誰からうけるのか、完成しなかった場合の担保責任はだれにあるのか、わかりやすく表にまとめましたので確認してください。
指揮命令権 | 完成責任 | 担保責任 | |
---|---|---|---|
請負契約 | 依頼者(プロセスには指示できない) | 労働者 | 労働者 |
委任契約 準委任契約 | 依頼者 | 依頼者 | 依頼者 |
派遣契約 | 派遣会社 | 依頼者 | 派遣会社 |
各契約ごとのメリット
契約の特徴を説明したところで、それぞれ契約ごとのメリットを紹介していきます。
請負契約の場合
依頼者
依頼者側は労働者と直接契約を結ばないため、管理業務から解放されます。
作業内容と納期を労働者に依頼したあとは、特に何かすることはありません。
いちいち経過を管理したり指導したりが面倒くさい方には、大きなメリットです。
また、社内で教育するのではなくすでに専門知識が豊富な人材に依頼できるので教育コストを削減することができます。
納期が決まっている仕事は請負契約がおすすめです。
労働者
労働者目線では、完成まですべて任せてもらえるので、完成させることができるなら勤務時間は自由です。
自分の好きな時間に働くことができますし、早く終わらせることができればその分作業時間も短くて済みます。
業務に集中できるうえに、成果をあげれば報酬が上がることもあります。
委任契約の場合
依頼者
委任契約では、業務に必要な労働力を確保できます。
委任契約なら業務のみ遂行してくれる労働者を効率よく確保できるため、人材不足の場合には効果的です。
繁忙期だけ一時的に人材が欲しいという場合にだけ働いてもらうこともできます。
請負契約とは違い完成までのプロセスに対して指示を出せるため、契約後も柔軟な対応が可能です。
契約した後の進捗を知りたい、変更する可能性があるので柔軟に対応してほしい、という場合には委任契約が向いています。
労働者
請負契約では納期までに成果を上げられないと報酬をもらうことができません。
しかし、委任契約では成果が上げられなかったとしても働いた分だけ報酬をもらうことができます。
完成責任は依頼者側にありますので、契約時と状況に変化があった場合にも対応がしやすいです。
派遣契約と似ている部分が多いですが、委任契約は業務を労働者から委任されておりますので、派遣契約と比べるとより自由度が高くなります。
派遣契約の場合
依頼者
従業員の成果やプロセスの管理だけではなく、労務管理までしないといけないのは大きな負担ですよね。
派遣契約であれば、保険や給与などの労務関係は派遣会社が責任を負ってくれるため、依頼者側の負担とコストの削減ができます。
特に高度なスキルが必要な業務の場合は、最初から採用をして教育をして…と通常通りの流れで行うと時間もコストもかかってしまいます。
「高度なスキルが必要な業務だけど、人が足りていないからすぐに人材が欲しい!」というときの人手不足を補うことが可能です。
派遣契約では、正社員だけではできない幅の業務を行えます。
労働者
正社員と同じような働き方ですが、派遣社員は正社員よりも自分の希望する条件で自由に働くことができます。
残業が少なかったり休みも取得しやすかったりするので、仕事とプライベートの両立が可能です。
ひとつの企業にずっと勤めるわけではないので、様々な職場を体験してスキルアップができます。
また、委任契約とは違い派遣会社と契約を結んでいますので、会社の保険に入れたり確定申告の必要がなかったりと労務上でもメリットがあります。
各契約ごとのデメリット
つづいてはデメリットについて紹介していきます。
請負契約の場合
依頼者
請負契約のゴールは仕事を完了させることですので、仕事の質は請負先次第です。
請負会社次第では、希望している成果を得られない可能性もありますので、請負先選びが重要なポイントになります。
また、請負契約はプロセスに関して指示を出せないため、途中で変更してほしいことが発生した場合でも契約後は柔軟な変更ができません。
トラブルを防ぐためにも、契約時に作業に対して細かく指示をすることが大切です。
労働者
請負契約は成果主義のため、いくら作業をがんばったとしても成果がなければ報酬がもらえません。
依頼内容に不備があるとトラブルになる可能性があるため、契約時の細かい確認は労働者にとっても重要です。
作業のプロセスに指示がない分、スケジュール調整も慎重に進める必要があります。
委任契約の場合
依頼者
請負契約とは違い、仕事を完成させる義務がありません。
業務の途中で柔軟に対応できる反面、納期が決まっている仕事に対しては完成できる保証がないため、委任契約は不向きです。
また、結果に関しては依頼側が責任を負うことになりますので、プロセスの管理も必要になります。
請負契約と比べると依頼側の手間が多く発生してしまいます。
労働者
労働者側に完成責任がありませんので、成果が出ていない中途半端な状態でも契約が終わってしまう場合があります。
引き続き作業をもらえる場合は問題ないですが、作業を与えられない場合にはまた新しい仕事を探さなくてはいけません。
定期的に仕事をもらえる相手がいれば問題はないですが、いない場合には収入が安定しないという不安があります。
派遣契約の場合
依頼者
派遣契約の場合は、新しく派遣社員を受け入れるたびに教育を行う必要があります。
契約期間の短い派遣社員を何回も請け負う場合は教育の手間も増えてしまいますね。
また、派遣社員は契約期間が決まっているため帰属意識が薄いです。
情報の重要性を理解していない場合も多いので、情報漏洩を心配して派遣社員には別のルールを設定している企業もあります。
派遣会社との連携も重要です。
労働者
派遣期間には法律で3年と決められており、上限があります。
ずっと同じ会社で働きたいと思っていても、契約が更新されない可能性も高いです。
契約を更新するかは派遣先が決めることで、自分では決めることができません。
また、派遣社員は時給制です。
スキルがないと時給が低い場合が多いので正社員と比べると給与がかなり低いこともあります。
請負契約と委任契約はフリーランスのこと
派遣契約は聞いたことがあっても、請負契約や委任契約と言われてもあまりイメージがつかない方も多いですよね。
フリーランスと聞くとイメージが付きやすいのではないでしょうか。
フリーランスは、働く場所や時間にとらわれず自由に働ける傾向にあります。
企業に属さず自由な反面、仕事は自分で取りに行かなくてはいけないため自分次第の要素がとても多いんです。
企業に頼らず自分の力で働きたい、自分のペースで働きたいという方には委任契約での働き方は向いています。
フリーランスに向いている人の特徴3選
具体的には以下の3つに当てはまる人が向いています。
- セルフマネジメント能力が高い
- オンとオフの切り替えができる
- コミュニケーション能力が高い
セルフマネジメント能力が高い
請負契約では完成責任は労働者にありますが、委任契約では完成責任は労働者にはありません。
しかし、どちらも期日までに仕事が終わらないことは、信用問題に関わります。
仕事の質を維持しながら期日を守るためには、自分自身の管理が大切です。
自由度が高い分、自分でやらなくてはいけないことが多くなります。
また、体調を崩してしまうと自分以外に働いてくれる人はいません。
体調管理も含めて、セルフマネジメント能力が高い人が委任契約に向いています。
オンとオフの切り替えができる
フリーランスは自分の勤務時間が自由です。
そのため、365日働こうと思えば働けますし、休もうと思えば休めます。
仕事モードに入ってしまうとずっと仕事のことを考えてしまっていたり、逆に休みから切り替えられなかったりするとメリハリのない生活になります。
働く場所も自宅のことが多いので、会社と違って「退社」がありません。
自宅とは別の場所に仕事場を借りているひともいますが、自分なりのオンとオフの切り替え方を見つけることが大切です。
コミュニケーション能力が高い
フリーランスというと、一人で働くからコミュニケーション能力がなくても問題はないと思うかもしれませんが、そんなことはありません。
自分で仕事を取ってくる必要がありますので、営業から交渉まですべて自分で行います。
企業の営業職と同様で、ヒアリング能力やコミュニケーション能力は必須です。
立場や職種関係なくいろいろな人と関わりたいという方に向いています。
契約時に法律を知らないと偽装請負になりペナルティを受ける
ここまでそれぞれの契約の特徴を説明してきました。
ややこしいかもしれませんが、契約ごとの特徴や法律を理解していないと偽装請負となりペナルティを受ける可能性もあります。
偽装請負とは、契約では請負契約なのに実際は派遣契約と同じになってしまうことをいいます。
偽装請負は、依頼者と労働者の責任があいまいになってしまうことが原因です。
請負契約は、完成責任を労働者が負うかわりに完成までのプロセスは依頼者からの指示を受けずに自由に行うことができる特徴がありましたよね。
しかし、依頼者が労働者に細かい指示を出したり、出退勤の管理を行ったりしてしまうことが一番起きやすいパターンです。
これでは労働者の立場が弱くなってしまい、請負契約なのか派遣契約なのか、わからなくなってしまいますね。
完成責任や指示責任の所在をあいまいにしないことが偽装請負を防ぐためには効果的です。
偽装請負など法律に関わることはこちらの記事で詳しく説明しておりますので、気になる方はチェックしてください。
業務は同じでも、契約を確認しよう
自分に合った契約方法で、自分らしい働き方をしたい方が増えています。
契約には請負契約、委任契約、派遣契約があり、それぞれメリットデメリットがあります。
契約形態によって管理内容が異なりますので、自分の契約形態の特徴を理解して契約形態を守りましょう!