コロナの影響で、派遣薬剤師はどうなるんだろう…
2020年初頭から、世界中で猛威を振るい始めた新型コロナウイルス。
飲食店をはじめ、店を構える各業界は営業自粛・時短要請を求められ、人員削減などの影響が出ています。
日頃、患者に薬を渡す薬剤師業界にコロナの影響はあったのでしょうか。
本記事では、コロナが薬剤師の仕事や転職市場におよぼした影響について解説。
今後、薬剤師が生き残るためにすべきコツも伝授します!
現在、派遣薬剤師として働く方は参考にしてください!
コロナが派遣薬剤師業界に与えた影響
コロナは派遣薬剤師に、どういった影響をおよぼしたのでしょうか。
具体的には、下記6点が挙げられます。
- 処方箋枚数が減った
- 処方箋日数が増加し、薬局の収益が減少
- 契約打ち切りが起きている
- 人員整理が起きている
- 自ら感染するリスクの発生
- 退職交渉はスムーズになった
一つずつ見ていきましょう!
処方箋枚数が減った
コロナにより、患者からもらう処方箋の枚数が減りました。
病院で受診した患者が、薬局で薬をもらうために病院で渡される処方箋。
コロナ前の処方箋枚数は、平均一日40枚程度が一般的でした。
コロナのパンデミックが起きてから、受診を控える患者が増加。
薬をもらう患者が減ったので、薬局を訪問する人も減りました。
コロナ後、処方箋枚数が一日10枚以下に激減した薬局も。
コロナ前後で、じつに7割以上減っていますね。
薬局に来る患者数が、一日10人以下となった薬局まであります。
コロナにより、薬をもらう人が激減しました。
処方箋日数が増加し、薬局の収益が減少
処方箋日数が増加し、薬局の収益が減少したことも挙げられます。
コロナで受診を控える人がいても、持病を抱える人は薬がないと生きていけません。
患者・薬剤師双方の感染リスクを減らすため医療機関が導入した手段が、処方日数の長期化です。
一般的に、一度にもらう薬の日数は1週間程度。
コロナ前の世界であれば、なくなればなんの不安もなくもらいに行けました。
コロナが蔓延している現在、「薬もらいに行こう」と安易に思えなくなりましたね。
患者に渡す薬の日数を、例えば2週間・1か月分など多めに。
処方日数を増やすと、処方箋1枚当たりの薬剤費は増加しますが、薬局は収益減に陥ります。
調剤基本料の算定回数が減少し、技術料の頭打ちが起こったためです。
患者一人当たりの収益が低下し、薬局の経営に影響を与えています。
契約打ち切りが起きている
派遣の契約打ち切りが起きている問題もあります。
上記で見たように、患者に渡す処方日数が長期化したことで薬局の収入が減少したためです。
派遣薬剤師は、高時給であることが特徴。
時給3,000円以上も珍しくありません。
収益が激減し、支出を減らす必要に迫られた薬局は、人件費の削減でコストカットに努めるように。
正社員を打ち切るのは難しいため、まずは派遣薬剤師の削減に踏み切りました。
派遣薬剤師は、一定期間働く有期雇用がある雇用契約のもとで働いています。
コロナ禍で各薬局は、契約満了を迎える前に派遣薬剤師を打ち切り始めました。
人員整理が起きている
人員整理が起きているのも、コロナの影響の一つ。
上記で、契約満了前に派遣薬剤師との契約解消が起きていることをお伝えしました。
派遣以外にも、正社員・パートの間でも人員整理が始まっています。
正社員であれば、給与の見直し・ボーナス削減。
薬剤師は、雇用形態に関係なく高額給与をもらっています。
初任給でも、各手当を含めると40万円以上になることも珍しくありません。
ボーナスを入れると、初年度から年収は500万円超。
働く人には嬉しいですが、払う側の負担は重くなります。
給与を数万円減らしたり、ボーナスカットすることで、薬局の減収穴埋めに使っています。
最悪の場合はリストラ。
正社員でも、年齢が上の方から優先的にリストラ対象となります。
派遣同様に非正規のパートも、人数を減らすなど、コロナにより人員整理が進んでいる現状があります。
自ら感染するリスクの発生
薬剤師自らが、感染するリスクも起きています。
コロナの感染リスクが高まるのは、人同士の接触や対面での会話時。
薬剤師の仕事は、患者に薬を渡して終わりではありません。
薬の飲み方の説明や症状の確認など、患者と話す場面があります。
症状の中には、風邪のようなコロナに近い症状をもって薬局に来る方も。
発熱・咳が出ている方だと、感染リスクが高まり不安ですよね。
実際、SNSを見ると下記のような体験談がありました。
調剤薬局だって、コロナ対策ちゃんとやってますよ!
咳などの症状や発熱の患者がふらっと来ることもあり、病院よりも自然と感染者が紛れることも!
だから、現場はめちゃくちゃ気を遣っています!!!
そこを国には知ってほしいし、薬剤師会はしっかり伝えてほしい!— かわしー@出歩く薬剤師2.0(コミュニティナースNT1期) (@kawaisland1234) June 8, 2020
薬剤師は医療従事者の一人。
コロナ医療の最前線で働いているため、感染リスクと隣り合わせの日常を送っています。
退職交渉はスムーズになった
上記は、コロナが薬剤師に与えた悪影響でしたが、一方で退職交渉がスムーズになったこともあります。
従来、派遣で働く薬剤師が契約満了を迎えても、退職できない問題が起きていました。
「薬剤師が足りていないから、今後も働いてほしい」といった薬局側の事情があったためです。
派遣薬剤師が次の職場に移ろうとしても、薬局側から昇給を掲示されるなどし、退職できずに働き続けていました。
一転し、コロナで退職事情も変わりました。
上記で見たように、コロナで薬局は収益が減少し、人員整理に迫られています。
派遣は非正規・高時給であることから、人員整理のターゲットにされやすくなりました。
コロナ前は退職を引き止められても、コロナで退職が容易に。
辞めようと思っていた派遣薬剤師にとっては、数少ないコロナのメリットですね。
コロナ前後で薬剤師が感じた変化
コロナ禍で、薬剤師は仕事中などにどのような変化が見られたのでしょうか。
具体的には、下記4点あります。
- 感染予防を心掛けるようになった
- 病院を受診する人が減った
- オンライン化が進んだ
- 患者が感染に神経質になった・クレームが増えた
一つずつ見ていきましょう!
感染予防を心掛けるようになった
感染リスクを減らすため、予防を意識するようになったのが一つ。
「マスク着用をお願いします」
「入店の際には、手指をアルコールで消毒してください」
「お買い物は、可能な限りおひとり様で」
どのお店に行っても、目・耳にするようになった文言ですね。
意識するのは、職場だけではありません。
休日などプライベート時にも、感染予防を心掛けていますよね?
旅行をしない・自宅で過ごす時間が増えた・買い物を最低限度にするようになった…。
コロナのパンデミックにより、意識・行動ともに変化しました。
病院を受診する人が減った
病院を受診する人が減ったこともあります。
「コロナが怖いから外出したくない」
「咳が出ている人と同じ空間にいたくない」
「室内にいたくない」
薬局には、なんらかの症状を抱えた患者が日々訪れます。
コロナの代表的な症状である、「咳・発熱」がある患者がいると不安になりますよね。
高血圧など、コロナ以外の症状で苦しむ患者も心理状態は同じです。
「薬局に行ったら、感染するかも」とおそれ、受診の自粛が起きています。
受診する人が減ると、薬をもらいに来る人も少なくなります。
薬剤師の仕事が減ったのはいいことですが、雇用打ち切りのリスクが高まりましたね。
オンライン化が進んだ
オンライン化が進んだのも、コロナ禍における変化です。
従来、患者と薬剤師のやり取りは薬局内でおこなわれてきました。
マスクをせず、対面でおこなうため互いの顔・表情が分かった上で仕事に取り組んできましたよね。
コロナ禍で上記の世界はなくなりました。
来訪する患者は減少。
訪れても、患者・薬剤師お互いがマスクを着用し、会話は最低限度に。
対面が減った分、SNSを使った薬剤師の新たな仕事が生まれました。
例えば、YOJO Technologiesが運営しているオンライン薬局「YOJO」。
薬局に出勤した薬剤師と、在宅勤務している薬剤師をリアルタイムで結んだものです。
お互い遠隔で働きながら、双方のやり取りの円滑化につながっています。
今後も、上記のような仕事が増える可能性がありますね!
患者が感染に神経質になった・クレームが増えた
患者が感染に神経質になり、クレームが増えたのも変化の一つ。
コロナは、いつ・どんなタイミングで感染するかわかりません。
薬剤師がマスクを着用しても、感染する可能性はゼロではないです。
薬局を訪れた患者から、クレームを言われるようになりませんでしたか?
「薬を渡してる手、ちゃんと消毒した?」
「薬の説明は、説明文見ればわかるから喋らないで」
「薬局で感染した人いる?」
感染を気にする気持ちが高まるあまり、ストレスが溜まって薬剤師に怒りがぶつけられていることが起きています。
SNSでも、下記のような声がありました。
薬局経営の友人が、コロナウイルス対応で念のため高齢のスタッフ数名を休ませた。そのため接客がかなり手薄に。
すると、あるシニア男性客から猛烈なクレームが。「この非常時になんだ? オレたちの健康を真剣に考えてるのか? 危機管理がなってない!」と。
こういう時にこそ、人の品性が問われる。
— 松本淳|アースメディア代表|メンター (@Jn_Matsumoto) February 14, 2020
ドラッグストア勤務だと、一般の買い物客も訪れるため、クレーム内容も変わっていますね!
派遣薬剤師の転職市場
コロナが派遣薬剤師の仕事に与えた影響について説明しました。
給与・雇用面の影響がありましたね。
コロナ禍でも、派遣で働く薬剤師は「転職」「次回の契約先」を頭に入れておく必要があります。
現在、派遣薬剤師の転職市場はどのような状況でしょうか。
具体的に見ていきましょう!
非正規の求人が減っている
派遣・パートなど非正規の求人が減っています。
上記で見たように、患者に渡す薬の処方日数の長期化により、薬局の収益は減少。
コストカットのため、各薬局は人員削減に手を出し始めました。
削減した以上、今後新たに派遣薬剤師を雇用する動きは鈍くなります。
有効求人倍率を見ると明らかでした。
有効求人倍率は、仕事を探している人1人に対し、どれくらいの仕事があるかを示した倍率。
厚生労働省の「一般職業紹介状況」をもとに見ていきます。
コロナ前の2019年、医師を含む薬剤師(パート含む)の有効求人倍率は4.75でした。
コロナが流行し始めた2020年2月は、3.41。
2021年2月になると、2.11にまで減少しました。
わずか2年弱で、倍率が半減しているのがわかります。
年度 | 有効求人倍率 |
---|---|
2019年 | 4.75 |
2020年 | 3.41 |
2021年 | 2.11 |
非正規の求人が厳しさを増しています。
転職活動のIT化が進んでいる
転職活動におけるIT化が進んでいることも、転職市場における変化です。
コロナにより、中途採用など採用活動も変化が生じています。
説明会は会場でおこなわず、オンライン開催。
面接も、会社を訪問しておこなう対面面接から、zoomなどを使ったオンライン面接に。
採用活動のIT化ですね。
薬剤師の仕事にも関係しています。
派遣会社とのやり取り・打ち合わせがオンラインで実施されるようになりました。
PC操作に慣れていないと、苦戦するリスクがありますね。
コロナ禍で派遣薬剤師が生き残るためのコツ
上記で、派遣薬剤師の転職市場についてみてきました。
求人が減っていること・転職市場や選考形式の変化でしたね。
今後、厳しさを増す派遣薬剤師の業界ですが、なにをすれば生き残るチャンスが増えるのでしょうか。
具体的には、下記6点あります。
- 薬歴管理を素早く記載できる
- 対人・在宅業務に柔軟に対応できる
- 意欲・向上心があり、率先し業務に取り組める
- 転職エージェントの利用
- ウェブ面接対策をする
- 正社員雇用を目指す
一つずつ見ていきましょう!
薬歴管理を素早く記載できる
薬歴管理の対処スピードを上げましょう。
「おくすり手帳お持ちでしょうか?」
日頃、患者に薬を渡す際に尋ねますよね。
おくすり手帳を見ることで、患者の飲薬履歴を把握できます。
「過去にどんな薬をもらっていたか」
「もらった薬と今回の薬に重複がないか」
「飲み切っているか」
おくすり手帳に、今回渡す薬の名前や種類などを記入する仕事が薬歴管理です。
患者一人一人に対しおこなうので、手間・時間はかかります。
処理スピードが上がれば、薬を待つ患者の待機時間が少なくなり、業務効率化につながりますよね。
薬局側からの評価も変わる可能性があります!
対人・在宅業務に柔軟に対応できる
対人・在宅業務への柔軟性も大事です。
コロナにより、対人でおこなう仕事の重要性は増しました。
患者への説明を丁寧にする・患者の疑問に耳を傾ける・相談に応じる…。
コロナ前、当然のようにおこなっていた仕事は、機会が少なくなりましたよね。
薬をもらいに来る患者は貴重な存在に。
数少ない患者に、感謝の気持ちをもって接するようになりませんでしたか?
対面の機会が減り、在宅の仕事も増えました。
今後訪れる患者のため、薬の説明文を入力する仕事などが挙げられます。
対面機会の減少・在宅勤務が進み、派遣薬剤師に求める役割が変わりましたね。
意欲・向上心があり、率先し業務に取り組める
意欲的に取り組めているかどうかも重要な指標となりました。
コロナ前、下記のようなメリットを選んで派遣薬剤師を選びませんでしたか?
「都合のいい日に働ける」
「時給が高い」
「責任感を求められない」
プレッシャーを感じずに働けましたよね。
コロナ禍の現在では、上記の考え方は通用しません。
人員削減が進んでいる現状、やる気のない従業員は論外。
患者の数が減っているからこそ、患者一人一人に向き合い、仕事を進める必要があります。
日々、向上心を持ち仕事に取り組みましょう!
転職エージェントの利用
転職エージェントを利用することも、今後働くために必要なコツ。
転職エージェントは、求職者と企業を結ぶ仕事をする人々です。
求職者には、希望条件に近い求人をお知らせ。
人材不足・応募者選定に悩む企業には、理想の人材を紹介するなど、双方の架け橋となっています。
転職エージェントを利用すると、仕事が見つかりやすくなるメリットがあります。
「自分で求人を探すのが苦手だ」と考える方は、転職エージェントを使いましょう!
ウェブ面接対策をする
ウェブ面接対策をするのも、やり方の一つ。
上記で見たように、転職市場において現在IT化が進んでいます。
オンライン説明会・面接に対応できないと、企業の試験を受験することすらできません。
オンラインに対応するためには、下記のようなことが必要です。
自宅PCがネットにつながりやすいか確認
説明会・面接の実施中、通信環境の悪さから途切れると気まずくなりますよね。
企業からも、「事前に準備してなかったのかな」と低評価を受ける可能性が。
ウェブ面接対策をする
ウェブ面接と対面で違うことは、間の取り方です。
対面だと、目の前にいる人のリアクションがわかるので、反応をもとに会話を進められますね。
ウェブ面接だと、1秒程度のタイムラグが生じることがあります。
通信環境の問題から、自分の声が相手に届いているか不安も抱くことに。
上記のような注意点をおさえて、ウェブ面接に挑みましょう!
正社員雇用を目指す
派遣ではなく、正社員になるのも一つのコツです。
上記で見たように、各薬局は非正規から人員整理の対象にし始めています。
有期雇用で働く派遣も、契約満了前に打ち切られることがあります。
正社員なら、給与・ボーナス削減はありますがリストラのリスクは小さめ。
安定した雇用を求めるなら、正社員が一番です。
2021年3月現在も、コロナは終息していません。
ワクチン接種が進み、感染者数が減少しても景気が戻るのには時間がかかると見込まれます。
アフターコロナも見据え、派遣ではなく正社員の道を考えるのもありですね!
まとめ~コロナ禍における派遣薬剤師の現状~
本記事では、コロナが派遣薬剤師に及ぼした影響についてみてきました。
薬局の収入が減少し、派遣薬剤師の契約が打ち切られたり、求人が減り今後転職が難しくなるおそれがあります。
仕事がなくならないために、派遣から正社員を目指したり、コロナ前より仕事に向き合う必要があります。
今後も薬剤師として活躍しましょう!