「契約社員とはそもそも何?」
「契約社員と正社員との違いはなんだろう…」
などなど、契約社員のことでこのように気になる方もいますよね。
そこで今回は、契約社員とはどんな働き方か、正社員・派遣社員との違いや契約社員のメリット・デメリットは何かなど詳しく解説していきます。
記事後半では契約社員として働くにあたっての注意点も解説しますので、ぜひ最後までお読みください!
契約社員とは?
まずは契約社員とは何なのか。概要から詳しく解説していきます
契約社員の概要
契約社員とは、雇用主と決まった雇用期間で労働契約を結んだ上で労働者のこと。
法律上で契約社員という名の雇用区分はなく、単に一般的に使用される呼称として「契約社員」と名がついています。
契約社員の雇用期間は?
契約社員は”有期雇用契約”のもとで働くため、一定の雇用期間が設けられています。
労働基準法によれば、有期労働契約の期間は原則最長3年。企業側も最長で3年の契約期間を提示してきます。
ただ実際のところ企業側は「1年」の労働契約を結んで、年ごとで契約更新・契約終了を判断するケースが多いんです。
契約社員の「5年ルール」の存在を押さえよう
契約社員の場合は「5年ルール」といって、契約社員を通算5年雇用した場合、その人を無期雇用に転換しなければならない」という決まりがあります。
これは2013年4月の改正労働契約法によって施行された法律によるもので、処遇改善・雇い止めの不安解消を目的に設定されたものなんです。
5年ルールが設けられたことで、契約社員は安定した生活を送りやすくなったり、自身のキャリアプランを描きやすくなったりと、メリットの大きいものとなりました。
契約社員の仕事の責任はどこまであるのか?
契約社員は立場上、正社員に比べて責任の重い仕事を任されることは少ないです。
ですが責任がない、なんてことありません。
責任感なしで仕事をしていても、次回更新時に契約を打ち切られる可能性があります。
自分の仕事を任された以上、担当業務は最後までしっかりこなす姿勢を持ちましょう。
「責任が軽そうだから契約社員で働こう」なんて考えは持たないほうがいいですね…。
契約社員と他の雇用形態との違い
では契約社員とかの雇用形態を比較するとどうなるのか、詳しく見ていきましょう。
雇用形態/項目 | 雇用主 | 雇用期間 | 給与体系 | 賞与・ ボーナス | 昇給 | 福利厚生 | 社会保険 | 勤務時間・ 勤務地 | 休日・休暇 | 退職金 | 解雇予告 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
契約社員 | 勤務先 | 最長3年 | 月給・時給・年俸制 | ○ | × | △ | ○ | 原則転勤なし | ○ | △ | ○ |
正社員 | 勤務先 | 定めなし | 月給制が大半 | ○ | ○ | ○ | ○ | 異動・転勤の可能性あり | ○ | ○ | ○ |
派遣社員 | 派遣元(派遣会社) | 同事業所・同部署だと最長3年 | 時給制 | × | △ | ○ | ○ | 自由に選びやすい | ○ | ○ | ○ |
上記項目について、それぞれ詳しく掘り下げていきましょう。
雇用主での違い
契約社員と正社員は「勤務先」が雇用主で、派遣社員は派遣元(派遣会社)が雇用主※となります。
契約社員は勤務先の企業で”直接雇用”の形となります。
※派遣社員は派遣会社と雇用関係を結んでいるため
雇用期間での違い
契約社員の場合は、働くにあたって雇用期間が定められています。いわゆる「有期雇用」というものです。
正社員の場合は「無期雇用」となり、定年を迎えるまで働けます。雇用期間に制限はありません。
なお契約社員は最長で3年まで働けますが、一般的には1年で契約を結んで、都度契約更新・契約終了を繰り返すケースが多いです。
なお医師や薬剤師など高度な専門知識が必要な職種で働いている場合、定年後も継続雇用となる場合は最長5年まで働けます。
給与体系での違い
正社員と契約社員とで同じ職務をする場合、原則的に基本給の差がつきません。
なお契約社員の場合は月給制が基本で、企業によっては時給制・年俸制のケースもあります。
賞与・ボーナスでの違い
賞与・ボーナスの支給条件については法律上の定めがなく、正社員も契約社員も就業規則または契約条件に従って、支給額・支給条件が決まります。
契約社員の場合、賞与・ボーナスが存在しないケースも考えられます。
あるいは支給はされても、正社員に比べて金額が少ないケースもあります。
賞与・ボーナスがどんな形でどれくらい支給されるかは、事前に確認しておきましょう。
なお派遣社員の場合は、賞与・ボーナス額も給料に含まれているケースが多いです。
昇給での違い
契約社員だと、契約期間満了するまで昇給は原則的にありません。
一方、正社員の場合は日頃の働きぶり・評価・役割などから判断して昇給があります。
派遣社員の場合は年次による昇給がありませんが、派遣会社の担当スタッフに相談・交渉することで、昇給できるケースもあります。
福利厚生での違い
契約社員と正社員との間で、利用範囲に違いを設定している企業が多いです。
そのため契約社員は正社員に比べて、受けられるサービスはやや少なくなる傾向にあります。
たとえば契約社員だと、住宅手当・リフレッシュ休暇などを受けられないことが多いです(いずれも長期雇用前提でも受けられていることが多いため)
派遣社員の場合は、派遣元(派遣会社)で用意された福利厚生を受けられます。
社会保険での違い
契約社員、正社員、派遣社員、どの雇用形態でも、条件を満+ならば社会保険に加入しないといけません。
なお加入できるのは、健康保険、雇用保険、労災保険、厚生年金保険です。
条件を満たしていて加入していない場合は、違法になるため注意しましょう。
勤務時間・勤務地での違い
勤務時間は正社員と契約社員とでほぼ同じ。ただし契約社員・派遣社員は「週4日で出勤」「12:00から出勤」などと変化をつけやすいです。
契約社員は原則転勤はないため、契約時から勤務地が変わることはほぼありません。
一方で正社員だと特に決まりがない限りは異動・転勤の可能性もあります。
休日・休暇での違い
休日や休暇については、契約社員・正社員・派遣社員とで大きな違いはありません。
なお労働基準法によって、最低でも年間105日以上は休日を取得しないといけません。
休暇(有給休暇)については、条件を満たせばしっかりと活用できますよ。
退職金での違い
正社員も契約社員も派遣社員、基本的には退職金を支給されます。
ですが企業側の退職金支払い義務について法律上定めがないため、企業によっては退職金制度がないケースもあります。
なかには退職金制度を正社員には適用し、契約社員には適用しないケースも多いです。
退職金の有無についても、事前に確認しておくべきポイントですね。
解雇予告での違い
労働基準法によると、企業が遅くとも解雇日の30日前に予告をする義務があります。
(解雇の予告)
第二十条 使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。(引用元ページ:e-GOV法令検索)
契約社員のメリット6つ
では契約社員として働くと、どんなメリットがあるのか。具体的には以下の通りです。
<契約社員として働くメリット>
- 希望業種・職種で働きやすい
- プライベートの時間をとりやすい
- 異動・転勤がない
- 残業が少ない
- 副業ができる
- 退職を切り出しやすい
①希望業種・職種で働きやすい
契約社員は正社員と違って、希望する業種や職種を自由に選びやすいのが大きなメリット。
契約期間を終了すればまた新しい仕事を始められますし、仕事探しにおいて柔軟に対応できます。
また好きな仕事や得意な仕事を見つけるチャンスも多いため、ご自分にピッタリな働き方も探しやすいです。
②残業が少ない
契約社員だと給料に固定残業代やみなし残業代が含まれるケースが少なく、残業時間に応じてそのぶんの残業代を支払われるケースが多いです。
となれば企業側も契約社員に対して必要以上に残業させたくないと考えるため、やたらと残業を強いられるケースも少ないです。
定時に帰りやすいのも、契約社員の魅力ですね!
③異動・転勤がない
正社員の場合は勤務地が固定されないことが多く、異動・転勤の可能性があります。
契約社員だと雇用契約のタイミングで勤務中の明記がない場合、転勤はありませんので安心してください。
転勤があれば生活環境が大きく変わってしまい、なかには家族に迷惑をかけることがありますが、その点をケアできるのも魅力ですね。
④プライベートの時間をとりやすい
上述の通り残業が少ない上に、勤務時間帯に自由度がある点から、プライベートの時間を確保しやすいのもポイント。
お子さんのいる方ならば仕事をしつつ、家事や育児の時間も作りやすいです。
「副業に励みたい」「スキルアップのためにもっと勉強したい」なんてお思いの方にもオススメですね。
ただし、会社によっては正社員と契約社員で働き方を区別しないケースもありますから、しっかりと就業規則や雇用契約の内容をよく確認しましょう。
⑤副業ができる
副業は法律上禁止されてなく、副業ができるかどうかは、勤務先の就業規則や雇用契約の内容によって異なります。
規則や契約で違反をしていないならば、副業をしやすいのもメリットです。
先ほども触れたように、契約社員は残業が少なくプライベートの時間を取りやすいです。
そうした点から副業を進めていけば収入アップに繋がりますし、お給料と合計すれば正社員より高い年収になるかも知れませんよ。
⑥退職を切り出しやすい
契約社員だと、契約を満了した時に退職を切り出しやすいのもポイントです。
たとえば近々、結婚や出産、留学などを控えている場合、すぐに切り替えやすいんです。
契約期間が決まっている分、仕事をしつつ自分の理想的なライフプラン・夢を叶えていきたい方にとっても魅力ですね。
契約社員のデメリット6つ
契約社員の働き方にはメリットが多い一方で、こんなデメリットもあります。
<契約社員として働くデメリット>
- 収入・雇用の不安定になりやすい
- 正社員よりローンの審査が通りにくい
- 契約期間満了まで昇給・昇格がない
- 福利厚生を受けられないことも
- フルタイムで仕事ができる
- 退職金をもらえないこともある
①収入・雇用の不安定になりやすい
正社員は基本的に定年までしっかり働けますが、契約社員と有期雇用契約につき、契約更新がないとまた次の仕事を探さないといけません。
そのため他の雇用形態と比較すると、どうしても雇用・収入が不安定になりがちです。
また派遣会社とは違って、次の仕事をかわりに探してくれることもないです。自分で探さないといけません。
仕事がすぐ見つかればいいのですが、見つからないと仕事にブランクができて無収入期間がどんどん広がってしまいます。
②正社員よりローンの審査が通りにくい
カードローンや住宅ローンなど、正社員と比べるとローンで審査に通りにくいのもデメリットです。
場合によっては、クレジットカードの審査も厳しいことがあります。
クレジットカードもローンは安定して継続的な収入のあることが前提ですし、不安定になりやすい契約社員だと利用・発行が難しいこともあるんです。
③契約期間満了まで昇給・昇格がない
契約社員の場合、昇給や昇格にも期待しない方がいいです。
まず契約社員の給料は契約満了まで雇用契約書に書かれた金額で支給されるため、契約期間を満了するまで昇給はありません。
昇給は契約を更新してからの話のため、間違えないよう注意してください。
④福利厚生を受けられないことも
福利厚生には法定福利厚生(法律規定の福利厚生)と法定外福利厚生(会社会の福利厚生)の、2種類が存在します。
- 法定福利厚生:健康保険、雇用保険、労災保険、厚生年金保険、介護保険など
- 法定外福利厚生:社員食堂、特別休暇、交通費、資格取得手当、住宅手当、育児手当など
このうち法定福利厚生は他の雇用形態と違いはないですが、法定外福利厚生は正社員のほうが充実している傾向にあります。
正社員・契約社員で受けられる福利厚生には若干の違いがあるため、この点も事前に押さえておきたいところです。
⑤フルタイムで仕事ができる
パート・アルバイトだと、契約で決められた時間あるいはシフトで空いた時間しか働けなく、フルタイムで働きたいときに働けないことがあります。
一方で契約社員だと、契約内容次第でフルタイム勤務も可能。
またフルタイムで働ければ、社会保険にも加入できるため安心ですね。
⑥退職金をもらえないこともある
契約社員の場合、会社によっては退職金が正社員より少ないorないケースが多いです。
有期雇用労働者に向けた日本労働組合総連合会での調査によると、自分自身が職場で退職金支給の対象になってるかのアンケートをとったところ、「87%は支給対象になっていない」との結果が出ています。
支給対象になっていても、正社員と異なる基準で支給しているのは11%ほどで、正社員と同基準なのはたった2%ほどでした。
契約社員になる以上は、退職金にあまり期待を持たない方がいいですね。
契約社員から正社員になれるって本当?
結論を言うと、契約社員から正社員になれる可能性はあります。契約社員から正社員になるには、以下2つの方法が考えられます。
- 正社員登用制度を活用する
- 転職する
なお厚生労働省によると、正社員登用制度を設けている企業は72%ほど。すべての会社で用意された制度ではありません。
また、正社員登用制度をしくことに法律上の義務もありません。
契約社員から正社員になりたい場合は、正社員登用制度は存在するのか確認してみてくださいね!
契約社員に向いている人・向いていない人
では契約社員として働く際、どんな人に向いているのか。向いていないのか詳しく見ていきましょう。
契約社員に向いている人
契約社員に向いている人は以下の通りです。
- 仕事とプライベートの両立をしたい人
- 副業しながら仕事をしたい人
- 定時帰宅したい人
- 転勤をしたくない人
- 勤務地を選んで柔軟に働きたい人
- 仕事以外に優先したいことがある人
契約社員は比較的柔軟に働きやすい点から、上記に当てはまる人に向いていますね。
契約社員に向いていない人
契約社員に向いていない人は以下の通りです。
- 仕事に安定を求める人
- 生活水準を下げたくない人
やはり正社員と違って契約社員は不安定になりがち。安定性を強く求めるならば、契約社員には向いていません。
契約社員で働くにあたっての注意点4つ
では契約社員で働くにあたり何に注意すべきか、詳しく見ていきましょう。
①契約期間は更新されないこともある
契約社員として長いこと働いていると、このままずっと働けるのではと思いがちなことも。
解雇されることはほぼなかったとしても、契約更新はおこなわれないことが考えられます。
契約社員の契約更新は企業と労働者の間でおこなわれ、双方の合意によって更新されます。
ただし労働者側は働きたいと思っていても、企業側が「契約を更新しません」と言ってしまえば事実上の解雇です。
退職すると派遣社員みたいに派遣会社から次の仕事を紹介してもらえませんから、自分で仕事を探さないといけないんですよね。
②契約期間満了後のプランも考えること
契約期間を満了したら正社員になりたいのか、派遣社員として働きたいのか、デュアルワークをしたいのかなど、その後の目標を考えてみましょう。
目標があれば契約社員のうちに何をすべきか明確になりますし、逆算で効率よく行動にうつせます。契約期間満了時までに不要なスキルも見えてきます。
計画的な行動ができれば、契約期間満了しても慌てたり悩んだりすることはないですよね。
③正社員登用制度について確認をすること
契約社員から正社員を目指したいにしても、まずはその会社に正社員登用制度があるのか確認しておきましょう。
また正社員登用制度がある場合は、登用実績・登用人数はどれくらいかと、事前に把握するのが重要です。
求人票には「正社員登用アリ!」との記載があっても、実際にはちゃんと整備・機能していないケースも多いため注意です。
④労働条件をしっかり確認すること
正社員はどんな働き方なのかイメージできていても、契約社員がどんな働き方なのかよくイメージできてない方が多いです。
そのため想像とは違った働き方にミスマッチを感じ、時間を無駄にする方もいます。
そんなミスマッチを生まないためにも、雇用契約の時点でしっかり労働条件を労働条件通知書で確認しましょう。
労働条件通知書には仕事内容や勤務地、給料、労働時間、退職・解雇条件などが明記されていますので、隅々までチェックしてください。
そのなかでよくわからない事項、曖昧な表現になっている事項は、質問して不明確な部分をなくしておくのも重要です。
まとめ~契約社員の働き方を押さえよう~
今回は、契約社員とはどんな働き方なのか、他の雇用形態との違いは何かなどを詳しく解説してきました。
契約社員は融通の利かせやすい働き方である一方で、正社員に比べて雇用が不安定になりがちな側面もあります。
どんな働くにも良い部分と悪い部分がありますので、よく比較した上で、ご自身にピッタリな働き方を選んでくださいね。